5月28日 Marina Abramović, Missy Mazzoli

MOMA
無料時間になっていないのに今までMOMAで体験した最大の人出。話題のアブラモヴィッチ展から。本人が観客と対面するやつにせよ、その他ライヴ・パフォーマーの作品にせよ、人が多過ぎ、列をなし、警備員の指示に従って進行する始末。観客に判断と責任を負わせる、もとのコンセプトは何も機能していない。まあそれは仕方のないことかもしれないが、それ以上にあまり関心を持ってこなかったこの作家の作品をまとめて見て、より関心がなくなった。ごく初期の作品を除けば、体はオブジェクトたりえないという絶対の安心の上に作品が成立しており、実際の肉体的危険に反して、体と意識の関係は極めて安定したものになっている。古典的な心身二元論を前提に、結果的にそれを安易に癒着させるものでしかない。それに比べれば、Ulayの方には反復や持続が認識のシステム自体を更新してしまうことへの関心があるし、小さな部屋でやっていたJoan Jonasの方が遥かに重要なパフォーマンス・アーティストだと思う。もうひとつ大きな特別展はHenri Cartier-Bressonで、集大成の展示。対象への瞬間的で主観的な驚きがフレームに結実するさまに感動する。"Alternative Abstractions"はジェンダーに焦点をあてて、戦後の抽象を考えるという展示。ルイーズ・ブルジョワの布地の本など面白い作品が多い良い展示。Lee Bontecouの作品を初めてまとめて見る。常設はやはりロシア未来派の部屋に尽きます。これだけ多いといちいち作家の名前は見なかったりするが、面白いのは最近関心を持っている作家、例えばオイヴィント・ファールシュトレームやユタ・バースの作品は視野の中で浮き上がるように見えて来ること。瞬間芸術ってうらやましい。

The Music of Missy Mazzoli
@ Roulette
あちこちで話題の作曲家。前半器楽とエレクトロニクス(レコーディング)の作品を中心に。後半バンド。演奏者は最後にゲストで出て来た一人を除けば全員女性でその辺は戦略なんでしょう。時々映像。印象派の延長にあるような不協和音を中心にリリカルでちょっとロマンティックな音楽。フォーカスははっきりしているが、好き嫌いの問題以上のものは何もない。またバンドの方はニューヨークの平均レベルで考えると随分たどたどしい演奏で、満員の観客の熱狂に当惑。女の子が並んでればいいんですかね。