2月26日 Whitney Biennale, Andrew Schneider

Whitney Biennale
昨今の流行を反映して、パフォーマンスやダンスをベースにしたものが多い。その見せ方においては、美術の制度を前提とせざるをえず、結局のところ見えてくるのは、外的な枠組みにすぎない。また他ジャンルの参照は表向きの寛容さと多義性を装うだけのことであって、作品から明晰を奪っている。簡単にいえばダメな展覧会で及第点はLesley Vanceの絵画、Robert Grosvenorの彫刻、パフォーマンス系ではKate Gilmore、Aki Sasamoto(体を張っているので)くらい。美術への信頼はなくなったが、美術を支えるシステムへの盲目的な信頼だけが感じられる作品ばかりで、現代美術も終焉したかと、暗澹たる気持ちでいたが、上の方の階でやっていたビエンナーレの懐古的な展示を見て、そもそもホイットニー・ビエンナーレ自体大したものではないことが分かり、ちょっと安心した。夕方のTravis Prestonのパフォーマンスもボイスを少し、パイクを少し、ジョナスを少し混ぜこねましたという感じ。パフォーマンスアートの教科書を適当に参照しただけの代物。
Andrew Schneider - Wow and Flutter
@ The Chocolate Factory
実像と虚像を巡る、込み入ったマルチメディア・パフォーマンス。観客が実像で目にするのは、上の階のパフォーマンスだけだが、下の階ではそれと相対するパフォーマンスがおこなわれており、ときどき映像でそれが垣間見える。そのようなメディア的な仕掛けだけではなく、シアターの構造や、フィクション性に対する言葉による対象化も執拗におこなわれる。ボードリヤール的な世界観と何が違うのかといわれると困るが、ベケットの拡大解釈とも取れる点が面白いところ。演出からインターフェイスの製作まですべておこなったパフォーマーのAndrew Schneiderの多才ぶりには脱帽。
Jen Zak, Amery Kessler, Kelly Pinho
@ Grace Exhibition Space
ニューヨークでは数少ない、ヨーロッパでいうパフォーマンス・アートのためのスペース。コンセプチュアルというよりプライヴェートなパフォーマンスが多く、正直あまり面白いとは思わないが、訓練されていない身体の変化やさまざまな細部が露になるところは評価できる。ホイットニー・ビエンナーレよりずっといい。
地下鉄で見たコラのパフォーマンスがあまりに素晴らしく、ニューヨークでストリート・ミュージシャンにはじめてお金を投げた。