2月27日 Glenn Branca

Glenn Branca
@ (le) poison rouge
最初にRobert Longoのスライドショー。ブランカのThe Ascension をかけながら、80年代の作品をスライドで見せる。レコードが全部終わるまで何度も繰り返しで、そりゃあ作品は文句なしに素晴らしいけど往年のスターのやっつけ仕事に見えなくもない。というかロンゴはいま何をやっているのだろう。
グレン・ブランカは20代くらいの若者とやっている、ギター*4にベース、ドラムの小編成グループ。ブランカはベッコウ眼鏡に巨体でよたよたしながら出てきて、ステージ前に設えられた柵にもたれながら、おっさん臭いMC、でもファッキンは連発。やおら手を振り上げると、最初の1音から強烈な音の連続。ロックのエネルギーを純粋に抽出したような音で1時間強。新アルバムの"The Ascension: The Sequel"を全曲。交響曲シリーズとは違って、"The Ascension"を継承した、よりロックバンド的な音楽、各曲5分〜15分。しかしここには個々人が統合されて音楽を奏でる「バンド」という要素はなく、淡々と楽譜を演奏する奏者は、ロック的な身振りとはほど遠く、むしろオーケストラ的である。ロックにおける身体感覚と音楽の癒着を作曲家という立場から客観的に捉え直すことで、ロックの持つ音響的エネルギー、エレクトリックギターという楽器のラジカルさだけを、ロック以上に実現してしまっている。そういう意味でブランカはあくまで作曲家、そしてこの30年で最高のひとり、ということになるだろう。指揮者としては感極まってのたうっているだけで、なんら実用的でないところも頼もしい。近代オーケストラにおいては指揮者が音楽の身体性を代表している訳だが、そこから機能を奪ってしまった純粋指揮。これまでCDやヴィデオを通して随分この人の音楽には触れてきたつもりだけど、生で見てここまで面白いと初めて知ったわけで、やはり見てみるものですね。20年前にこれを見ていたらきっとギターを必死になって練習したことだろう。終わってからも耳鳴りのする音量はニューヨークでは初めて。