3月10日 Deborah Hay, Woostergroup

NYPLで"A selection of dance video", "Merce Cunningham's sixty years of dancing", Deborah Hay Dance Company"A tribute to John Cage"を見る。
ヴィデオダンスは80年代後半のコンピレーションだが、この時点で既にさして魅力のないジャンルになっていたようだ。とはいえKit Fitzgeraldのヴィデオの効果で遊びまくったStephanie Woodardの作品(Peter Zummoのへろへろミニマルミュージック+ジャズも良い)は楽しく、なぜか2作品入っているDebra Wannerの作品は編集とフレーミングに特化しており、面白い。
カニングハムは97年のBAMでやったトリビュートの記録。Bill Irwinが出てきて、カニングハムのパロディーをやったりBAM的なメインストリームのカニングハム受容の性格を表わしている。トワイラ・サープのイントロが彼女の知られざる過去を示していて意外だった。バリシニコフの踊る"Walkaround time"(のソロ部分)も面白いが、実際のところ本当に凄いのはカニングハム・カンパニーによる"Sounddance"で、この辺がカニングハムのピークのように思う。最後のカニングハムのソロは、私が1994年に見たものより、闊達でこれも素晴らしい。
デボラ・ヘイは初見。これがなんとも形容のできない、驚くべき作品で敢えて例えるなら、「肉体の叛乱」以前の土方巽のありうる発展型か。基本的には異言(ヴォイスパフォーマンス)をところどころ挟みながら、体がもさもさ動くだけで、基盤となる身体技法があるのかどうかすら分からなかった。大雑把に捉えればアジア的な身体技法+汎神論なのかもしれないが、そう言い切ってしまうには当惑するほど豊穣。


Wooster group "North Atlantic"
@ Baryshnikov Art Center
ウースター・グループも初見。冷戦下の北大西洋上のアメリカ航空母艦で繰り広げられるスラップスティック(たぶん)。主役級のひとりがとにかく早口で話が追えず困った。タイトルからして「南太平洋」のパロディだからミュージカル風。戦場での男と女の分裂みたいなものがテーマになっているようだし。ひたすら細かいギャグの連続。演技のスタイルでいえば丁度日本でいう80年代小劇場、作劇法でいえば70年代アングラで、ちょっと拍子抜け(リチャード・フォアマンのような、ぶっとびはない)だけど面白かった。パロディ作品はコンテクストを熟知しないと判断が難しい。役者の何人かはとてつもなくうまい。