2月13日 Dia:Beacon, Trisha Brown, Charles Mingus

Trisha Brown Dance Performance
@ Dia:Beacon
マンハッタンから1時間半かけたところにある巨大現代美術館。まず展示をみる。前情報をいろいろ聞いていたせいか、それほどの驚きはないけれど、ひたすら巨大な空間に巨大な作品をひたすら並べるというコンセプト。ドナルド・ジャッド、リチャード・セラはいかに人間と空間のプロポーションに作品が依存しているかが驚くほど露骨に現れ、ダン・フレヴィンは配列のヴァリエーションだけになってしまい、しかし作品が空間を作ってしまうブルース・ナウマンはどこで見ても一緒。身体との関わりに置いて、一見セラ(の巨大作品)とナウマンは似通っているけれど、抽象化された身体を前提とするセラと、個別の身体が一般化する瞬間を捉えるナウマンでは逆方向のベクトルが働いている。この前のテート・モダンでも思ったけれど、ロバート・スミッソンはもしかしたら(単に美術史上ではなく)かなり重要な作家かも知れない。ソル・ルウィットは素材に依存する作家ではないはずが、ここでは圧倒的な壁面になってしまう。また、おそらく本人にとっては理想に近いであろう展示空間に置かれたジャッドの作品にはいろんな疑問が湧く。というほど考えさせられる展示。公演にあわせてトリシャ・ブラウンの"For MG"をブラウン自身が舞台袖から撮った映像も上演されていた。舞台に出る直前のダンサーと舞台の上のダンサー、何が同じで何が違うのか、ではなくて差異の反復。
トリシャ・ブラウンは150人ほどの観客を連れて、5作品を違った部屋で順番に上演するもの。Floor of the forest/ 格子状のロープで吊られた服を2人のダンサーが着てぶら下がる。10分くらいで終わってしまい、ドクメンタで見たやつの方が面白かった。Spiral/ 地下の列柱をダンサーが回転しながら柱に垂直になって降りる。8人が一斉に降りた後、ワイヤーの長いメンテナンスをして今度は一人ずつずれて降りる。単にカタルシスではなくて、運動の持つ思いがけない豊かさが数秒の間に炸裂する。本当に感動的。Excerpt from Foray Foret/ 4人のダンサーがジャッドの作品の前でユニゾンで踊る。ちょっとした重心の揺らぎから運動と運動をつなげていく。その重心が上から下へではなく、下から上へと移動しているかのように見えるのが素晴らしい。ユニゾンが複数による全体化にも、差異の強調にも収斂しない。You can see us/ トリシャ・ブラウンとビル・T・ジョーンズによって初演された作品。点対称によるユニゾンが今度は古典的なバランスに見えてしまう。ラウシェンバーグの衣装と、適当な音楽がいけないんじゃないかなあ。Skymap/ 観客は床に寝転がって、ブラウンの録音された声にしたがって想像上の空の旅をおこなう。
最後にKlaus KertessとPhilippe Vergneとブラウンの対話。Dia Art Foundationのディレクター、Vergneの割とストレートで重要な質問にブラウンははぐらかすように答えるのが気になる。あんまりロジカルに考える人じゃないのかな。
Charles Mingus Orchestra
@ St. Bartholomew's Church
ミンガス祭りの一環。ガンサー・シュラーが自分のアレンジを指揮するとあっては行かねばならない。ミンガスの大編成ものについてはほとんど知らないのだが、ミンガスを定期的にやっているグループは三つあって、オーケストラはそのひとつ。10ピースでピアノなし、バスクラ、ファゴットを含むクラシック・オーケストラな編成。こんなエリントン的な音楽だとは知らなかったし、とても面白い音楽だけど、ジャズのビッグバンドは教会で聴くものじゃない。かなり前の方の席だったけどリズム隊が奥にぼやけてかなりきつかった。PA入れようよ。シュラーの指揮した2曲はたぶん会場を意識したアレンジでこれは素晴らしく、ゲストのEdmar Castanedaのハープが想像を超えた超絶技巧。